2011年4月6日水曜日

放射線被曝のリスク


何人かの職員から放射線被曝のリスクについての質問をいただきました。参考になりそうな項目を、東京大学吉澤康雄 名誉教授の著書から引用しながら今回の原発事故を考えてみたいと思います。 
多くの放射線障害の中で、影響があらわれる最低の線量を「しきい線量」といいます。それ以下では影響はあらわれません。しかし、発がんと遺伝的影響については「しきい線量」が無いとされています。
「しきい線量」が無いとされているものについては「リスク係数」という確率をあらわす数値を用います。確率を拠り所とする場合には、例えば100万分の1の放射線でも100万分の1のリスクがあることになります。どんなに微量の放射線であっても「絶対に安全です」とは絶対に言えなくなります。
現在のμシーベルトは極めて微量な単位ですが、だからといって絶対に安全とはいえません。そこで「直ちに健康に影響する数値ではない」というフレーズが多用されることになります。このフレーズは「リスク係数」を拠り所にした回答です。
実は「リスク係数」は放射線の怖さを説くための数値です。どんなに少ない放射線でも何がしかの影響があるという「仮定」の上に立って決められています。防護のための数値であり、被曝した後の判断に用いる数値ではありません。幅のある数値であり、さらに、防護のための安全係数を考慮してかなり大きめの数値としています。
そして、もっとも重要な点は、低線量被曝(約100rem以下)による発がんについては確証性が乏しい点です。そもそもの「リスク係数」算定の基礎となっているのは高線量被曝のデータからの推定によっています。つまり、現在話題になっているμシーベルトのような超低線量の放射線の影響についての証拠はさらに乏しいといえます。

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